申請書の書き方の手引き

はじめに

ここでは共同利用課題申請書を作成する際に必要な情報と書き方のアドバイスを記載しています。
※アドバイスに関しては課題審査委員会の見解ではなく、あくまでビームライン担当者の目線で申請書を見た際に気づいたことであることをご了承ください。
PFオフィシャルの記入要項はこちらにあります。

ここでは一般の共同利用課題を対象にしています。成果非公開の施設利用など、主に産業利用に関する申請に関しては別ページにまとめていますので、そちらをご覧ください。
PFでの産業利用課題について

申請書全般に関すること

申請書の評価は、基本的には申請書に記述された内容から、研究の意義や実験方法が読み取れ、その通りに行けば相当の意味ある結果を得られるがどうかという評価です。
したがって、申請者の計画していることがレフェリーに正確に伝えられるような表現が必要です。

PACの審査では、一般的な論文審査のように課題内容に精通したレフェリーを見つけられない場合もあります。従って、専門分野の多少異なる研究者にも内容を理解できるような工夫は必要です。場合によっては研究背景の説明が必要でしょうし、略称の使用には注意が必要です。しかしながら、放射光や対象分野に全く関係のないレフェリーがつくことはありませんので、「放射光とは」「XAFSとは」からスタートする必要は全くありません。

共同利用実験では、実験室で出来る予備実験は既に行われている(進行している)ことが暗黙的に前提となっているようです。従って、「何にも分からないから取り敢えず XAFS 測定をしてみよう」という申請が高い評点を得るには相当の工夫が要ると思います。もし、本当にそのような内容で申請する場合、例えば実験室での予備実験を持ってしても実際にXAFS測定がうまくいくかどうか判断がつかない場合などは、P型課題(予備実験型)が利用可能なケースもあります。その場合はまずビームライン担当者もしくは担当グループに相談してください。

課題の区分

2015年4月現在、PFの利用法には次の種類があります

  • G型:一般共同利用実験(2年間有効、年2回募集)
  • P型:初心者型もしくは予備実験型(1年間有効、随時受付)
  • U型:緊急かつ重要な課題(スポット利用、随時受付)
  • T型:大学院生奨励課題(3年間(もしくは卒業まで)有効、年2回募集)
  • S2型:長期のビームタイムを必要とする高度な研究(3年間有効、年2回募集)
  • S1型:ビームラインの大規模改造を伴うプロジェクト研究(随時受付)
  • 施設優先利用(V型):国プロ等の実施のために優先的に施設を利用する課題(随時受付、有償、成果公開)
  • 施設利用(Y型):主に民間利用など成果を公表しない課題(随時受付、有償、成果非公開)
  • 民間共同研究(C型):KEKの研究者と民間企業の研究者が共同で行う課題(随時受付、有償、成果公開)
  • トライアルユース(I型):文部科学省の先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業による課題

通常はG型での応募となります
P型、T型での申請には事前にビームラインを管理するグループもしくは担当者との打ち合わせが必要です。
U型は次の課題募集を待っていられない場合の窓口です。緊急性と重要性の両方で判断します。
施設優先利用に関してはこちらをご覧ください。対象は国又は国が所管する独立行政法人その他これに準ずる機関が推進するプロジェクトにより採択された研究課題です。科研費研究は含まれません。

施設利用、民間共同研究、トライアルユースに関しては主に民間企業を対象にした利用です。
民間企業によるXAFSビームライン利用に関しては別ページにまとめています。
産業利用について

実験責任者について

PFの共同利用課題への応募資格は、「国立、公立及び私立大学、国立、公立研究所等の研究機関の研究者又はこれらに準ずる研究者に加えて、科学研究費助成事業の申請資格を有する機関に所属する研究者が研究成果を無償で社会に還元することを主目的とする研究等」定められています。実際には

  • 国内外の大学及び公的研究機関に所属する研究者
  • 科研費に応募資格のある民間研究機関に所属する研究者(成果を無償で社会に還元する場合)

となります。注意点としては大学院の学生はこの中に含まれませんので、一般課題への応募はできません。
例外として、学生の育成を目的としたT型課題があり、こちらの課題には大学院生(主に博士後期課程を想定)のみが応募できます。
T型課題については事前に打ち合わせが必要です。

Contact Person in Japan:CPJ

国外の研究者が応募する場合は、国内で連絡役となる研究者(Contact Person in Japan:CPJ)を立てる必要があります。
これは放射線作業従事者の手続きや国内での交通・宿泊などKEKの職員ではカバーしきれない部分を調整していただき、スムーズに実験が進められるように準備してもらうことを目的としています。近年は、国際化対応も進んでおり、来日して実験を行うにあたって特に問題が起こらないであろうという場合にはビームラインスタッフがCPJとなることもあります。独自にCPJが立てられない場合はご相談ください。

課題審査分科

XAFS課題のほとんどは「3.化学・材料」の分科で審査されます。「3.化学・材料」分科では「化学状態に関する研究,材料創成・評価に関する研究」を対象にしています。
材料の特徴などで他の分科でも審査して欲しい場合は、第3分科と他の分科の複数選択で出すと良いでしょう。

  1. 電子物性:物質の電子状態の研究
  2. 構造物性:回折・散乱法による物質構造の研究
  3. 化学・材料:化学状態に関する研究,材料創成・評価に関する研究 ※ソフトマターは第5分科です
  4. 生命科学I:タンパク質結晶構造解析
  5. 生命科学II:生命科学に関する研究のうち4に属さないもの、及び小角散乱によるソフトマター研究
  6. 装置技術・検出器

実験参加者

実験責任者以外に実験に参加(実際にPFで実験を行う)するメンバーを記載します。実験参加者は採択後に変更もできますが、経験者が参加メンバーに加わっているかどうかで実験の実現可能性を判断することがありますので、実験を実施する上で中心的になる人物は必ず記載してください。

実験参加者には大学院生や、共同研究先の民間企業の研究者等、実験責任者となれない方も記載できます。

ただし学部学生は「研究」ではなく、「実習」という扱いになりますので、別途手続きが必要です。
実習手続きの流れ(つくばキャンパス)を確認の上、手続きを進めてください。手続きに時間がかかりますので、学部学生を参加させる場合は余裕を持って手続きを進めてください。

希望ビームタイム(ステーションの選択)

PFのXAFS実験ステーションは複数ありますが、それぞれ特徴が異なりますので、ビームライン情報のページを確認の上、最適なビームラインを記入してください。
典型的な分け方ですとおよそ次のようになります

  • BL9A:高強度X線による微量元素の蛍光測定、軟X線領域(2.1~4keV)での測定
  • BL9C:汎用透過法XAFS、ガス使用in situ測定
  • BL12C:汎用透過法・蛍光法XAFS、試料自動交換装置によるハイスループット測定
  • BL15A1:セミマイクロビームによるピンポイント分析、化学状態マッピング測定
  • AR-NW2A:DXAFSによる時間分解測定、高強度レーザーを用いた実験
  • AR-NW10A:高エネルギー域(14~41keV)でのXAFS測定

なお、課題採択後においても実験の進捗状況により申請時と異なる実験ステーションを使用することができます。
また、施設側の判断により申請と異なるステーションを割り当てる場合もあります。

実験詳細情報(実験の目的、計画)

XAFS に関する申請の場合、方法論的な新奇性がないからといって著しく低い評価になることはありません(著しい高得点も困難かも知れませんが、内容が良ければ 4 点程度はとれます)。 研究対象とする系の重要性、その系について明らかにしたいこと、その目的と XAFS とのマッチング、実験計画が鮮明であれば不採択になることは無いはずです 。

実験対象とする「その試料」の重要性を具体的かつ簡潔に記して下さい

測定対象とする試料が興味ある物性や活性を示すのであれば、それを数値等を用いて 具体的 に 記して下さい。一般的に話題になっている対象というだけで高い評価を得る事は困難です。また形容詞を用いた定性的表現はレフェリーに良い印象を与えません (例:×この触媒は○○反応にユニークな特性を示し →○この触媒は従来の○○反応と比べて低い△△℃で、××倍の活性を有すると共に、□□のみを△□ % と選択的に合成出来るという興味ある活性を示し)。勿論あまりくどい説明は不要です。 重要なのは、世の中に何万、何億とある試料の一つとしてではなく、「これを研究することが特に重要なのだ」ということをレフェリーに納得してもらうことです。不採択となる申請はこの点に問題があるケースが大多数です 。

どういった試料を、どういう条件、方法で実験するのか具体的に記して下さい

試料の組成や測定温度等をパラメータとして振る場合はその科学的な意味付けが理解できるように記して下さい。片っ端から絨毯爆撃というのは予備実験が十分でないという印象を与えます。

XAFS を用いて何を明らかにしたいか明記して下さい

申請内容に依っては「 XAFS が最適な手段ではない」とか「 XAFS では分からないだろう」と思われるものがあります。いくつかのモデルが想定され、 FEFF 等で検討した結果、 XAFS で 区別できそうであるならそのデータを示した方が良いでしょう。また、一連の物質開発研究の中でキャラクタリゼーションの一つとしてXAFSを使いたいとい う場合もあるでしょうが、この場合でも単に研究や研究対象の重要性だけでは不十分で、XAFSを用いて何を何処まで明らかにしたいかを明瞭に記して下さ い。

実験目的と方法の整合性に注意して下さい

界面を目的としながら、バルクの情報しか得られないと思われる手法を採っている等の技術的な詰めの甘さが見える申請もあります。

要点を押さえて簡潔な記述を

審査員は多数の(時として 10 件以上)の申請を短期間に評価することを求められます。従って、何度も読み直さないと何を書こうとしているのか理解できない申請書は困りものです。また、所属機関に依っては参考文献を容易に入手出来ない事もあります(例えば KEK には J. Chem. Soc., Chem. Lett. をはじめ化学系の文献は殆どありません)。参考文献に当たらなくても、これまでの準備状況や研究の意義、特色が分かるように申請書を書いて下さい。

試料の組成は定量的に記して下さい

審査には 実験計画の妥当性を判断する と いう性格もあります。試料の組成が分からなくては評価のしようがありません。また、試料が未だ定まっていないのではないかという印象をレフェリーに与えが ちです。(×試料は希薄なので蛍光法で測定 →○試料の濃度は△△で、透過法では測定困難なため、××検出器を用いた蛍光法で測定)。

申請書に書く前に、透過法で測定可能か、どれ位の厚さの試料が最適か定量的に当たってみて下さい

教科書にあるように、 XAFS の試料には S/N を最大にする最適厚さがあります。とりわけ光源強度が低い高エネルギー域では敏感になります。例えば、銀のフォイルでは、 50 μ m が最適ですが、 20 μ m になると、 S/N は約半分になってしまいます。

石英窓のセルに試料を入れて測定等窓材による吸収のため測定が困難であると思われる例もあります。

検討した上で勝算がある(他に手が無く、困難を承知でやらざるを得ない)場合には簡単に触れた方が良いでしょう。

マトリックスによる吸収はX線のエネルギーによって大きく変化します。例えば、 1000ppm の銅の水溶液を透過法で測定することは困難でしょうが、 1000ppm の銀の水溶液は透過法を用いて容易に測定できます。必要な光路長も異なりますので、定量的に検討して下さい。

測定する吸収端を明記して下さい

多成分の試料では測定して意味のある XAFS と余り意味のない XAFS があるはずです。実際に測定するのはどの吸収端であるのか明示して下さい。また、組成によっては吸収端同志が干渉して(例えば Ti K と Cs や Ba のL) EXAFS 信号を得られるとは考えられない場合もあります。予め表で確認して下さい。

XAFS 信号の検出に用いる方法を明記して下さい

申請者が透過法で測定しようとしているのか蛍光法や転換電子収量法で測定しようとしているのか、また蛍光法の場合どの検出器を予定しているのか等の情報はど の程度良く検討されているかを判断するには役立ちます。この辺を曖昧にして吉と出るか凶と出るかは運でしょう。蛍光法でもより低エネルギー側の蛍光による 妨害等の問題はあります。例えばチタニアに担持したバナジウム等の場合、常識的には Lytle detector を用いて蛍光法で測定することは極めて困難でしょう。

その他、些細なこと

ここに記すことを理由に不採択になることは無いとは思いますが、レフェリーの評点が 0.1 ~ 0.5 点位下がることが無いとは言えませんのでご注意下さい。レフェリーをやった経験ではワープロの変換ミスはともかく、その他の点に付いては確実に印象を悪くします。

  • どんな書類でも同じですが、誤字、脱字の類は審査員の印象を悪くします。ワープロ特有の変換ミスについてもご注意下さい。
  • 学術用語については注意して正確な表記を心掛けて下さい。
  • 吸収端の名称やエネルギーにも注意を払って下さい(吸収端と特性線の名称が混乱していた例もあります)。単なるミスタイプであっても、「何も分かっていない」と評定者に誤解されると損です。
  • ビームライン名の記述やビームライン光学素子の機能に付いては正確な理解、記述をお願いします。
  • 高輝度と大強度の違いにも注意して下さい。通常の XAFS 実験では大強度が必要となることはあっても、高輝度が必要となることはそう多くないと思われます。
  • 以前実験してから相当期間のブランクがあった方は当Webサイト等で最新の情報を得る努力をして下さい。ステーションの状況等は日々変化しています。

 

実験に関すること等、お気軽にお問い合わせください。

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