まず、測定の基本は「透過法」です。
測定したい試料が透過法で問題なく測定できるかどうかは試料の組成がわかれば判定できます。
そのため、あらかじめ元素分析を済ませておくことを推奨します。
組成がわかれば、測定したい元素の吸収端付近のエネルギーにおける各元素のX線吸収係数を用いて試料全体のX線吸収係数を見積もることができます。
各元素のX線吸収係数(線吸収係数、質量吸収係数)は「International Tables for X-Ray Crystallography」などを参照すれば得ることができ、そこから手計算や簡単な表計算マクロなどで計算が可能です。
放射光施設などで配布してる専用の計算ソフトを使用すると時間が短縮できます。PFでは「SAMPLEM4M」というソフトウェアを配布しているのでソフトウェアライブラリのページからダウンロードしてください。
- Samplem4M(本サイトのソフトウェアライブラリへ)
- SPring-8産業利用推進室が配布しているXAFS試料調製ガイドプログラムはこちら
- 名古屋大学シンクロトロン光研究センターが配布している吸収係数計算プログラム(AbsC)
透過法用試料の作成
まず、上記のソフトウェア等を用いて必要な試料量を見積もります。
一般的な成型方法は錠剤成型器を用いてペレットにする方法です。ただし、XAFS測定で必要な試料量はペレットに成型するためには少なすぎる場合がほとんどですので、窒化ホウ素(BN)等を混合してかさ増しを行います。
(例:試料5mgにBNを100mg混合し、10mmφのペレットに成型する)
BNを混合する際には乳鉢などで均一になるまで混ぜ合わせる必要があります。不均一な混合状態でXAFS測定を行うとスペクトルの品質が低下します。
成型したペレットはサンプルバッグなどに入れて保管するとよいでしょう。硬X線測定の場合はサンプルバッグごと測定することが可能です。
BNを混合したくない場合やプレスができない場合は、(試料が粉体であれば)カプトンテープやスコッチテープに直接塗りつける方法があります。この場合、全量を1枚のテープに載せるのではなく、複数枚に分け、さらに折ることにより試料の均一性を向上させることができます。
蛍光法用試料の作成
蛍光法の場合は、対象元素が十分に希薄であること、または試料厚が十分に薄いことを確認してください。濃く厚い試料は蛍光法ではうまく測定できません。
溶液を測定する場合は、アクリル板などで水槽を作成し、X線が透過する窓(5~10mmφ程度)をカプトンテープで作成すると簡単に測定できます。